あまり知られていない単語だが、gentilé(ジャンティレ)とは地域・地方・町などの住民をさす単語をいう。パリに住む人はun Parisien / une Parisienne、ノルマンディー地方la Normandieに住む人なら un Normand / une Normandeである。ちなみにgentiléはそのまま形容詞としても使えるので、頭を小文字にして la mode parisienne「パリのファッション」un cidre normand「ノルマンディー産のシードル」のように使う。
gentiléは派生語 (mot dérivé) の一種なので、名詞から形容詞を派生する語尾を持つものが多くある。次の単語の語尾の –al, -ois, -ien, -ainなどは、名詞から形容詞を作るときによく使われるものである。
la Provence プロヴァンス地方→ un Provençal / une Provençale プロヴァンス地方の住民
la Suèdeスウェーデン → un Suédois / une Suédoise スウェーデン人
l’Alsace アルザス地方 → un Alsacien / une Alsacienne アルザス地方の住民
l’Amérique アメリカ → un Américain / une Américaine アメリカ人
しかし国や地域・地方・町の名は固有名詞なので、ふつうの形容詞を派生する語尾とはちがう形になるものもある。たとえばモナコ公国 la Principauté de Monacoの住人は un (une) Monégasque という。このように予想のつかない形があるので、gentiléはクイズ番組でもよく出題される。
gentiléを知るために参考になる文献としては次のものが挙げられる。
・新倉俊一他『フランス語ハンドブック』白水社、1978.
巻末にフランスの地方名とその形容詞、世界の国名一覧表とその住民名が掲載されている。しかし古い本なので、国名が変わっていることもあり、新しくできた国は載っていない。都市の住民名も出ていない。
・倉方秀憲『倉方フランス語講座 II 語形成』トレフル出版、2024.
第4章「形容詞を作る」に、「国・都市・地域などを表す形容詞を作る接尾辞」という項目があり、多くの例が挙げられている。しかしあくまで語形成の規則を扱っているため、例外的で特殊なgentiléは載っていない。
こんなとき頼りになるのがインターネットだ。フランス語版 Wikipediaを引くとその都市の住民名が書いてある。たとえばパリ郊外の町の Saint-Germain-en-Layeの住人は un (e) Saint-Germanois(e)というとわかったりする。
ヨーロッパの国の住民名は教科書などに載っていることが多いので、フランス語を学ぶ人にもなじみが深いだろう。
l’Espagne スペイン → un(e) Espagnol(e) スペイン人
lAllemagne ドイツ → un(e) Allemand(e) ドイツ人
l’Angleterre イギリス → un(e) Anglais(e) イギリス人
la Belgique ベルギー → un(e) Belge ベルギー人
しかしあまりなじみのない国だと住民を表す単語にも意外性がある。
le Yémen イエメン → un(e) Yéménite イエメン人
le Congo コンゴ → un(e) Congolais(e) コンゴ人
le Lichtenstein リヒテンシュタイン → un(e) Lichtensteinois(e) リヒテンシュタイン人
イエメン人の語尾の-iteは住民を表すときによく使われる語尾で、京都の住民は un(e) Kyotoïte、東京の住民は un(e) Tokyoïteという。「キョトイット」「トキョイット」と読む。
都市名で定冠詞の付いている都市名は定冠詞を取ってgentiéを作る。
Le Havre ルアーブル → un(e) Havrais(e)
La Rochelle ラロシェル → un(e) Rochelais(e)
Saint-の付く都市名はSaint-を取るものが多い。
Saint-Tropez サン・トロペ → un(e) Tropézien(ne)
Saint-Malo サン・マロ → un(e) Malouin(e)
都市名が複合語になっている場合は、その一部だけを使ってgentiléを作ることが多いようだ。
Aix-en-Provence エクス・アン・プロヴァンス → un(e) Aixois(e)
Salon de Provence サロン・ド・プロヴァンス → un(e) Salonais(e)
ただし、Aixois(e)はAix-les-Bainsの住民もさすのでややこしい。
まったく予想のつかない gentiléもある。その多くは昔のラテン語の綴りから来ていることが多い。
Saint Etienne サン・テティエンヌ → un(e) Stéphanois(e)
Cahors カオール → un(e) Cadurcien(ne)
Le Mans ル・マン → un Manceau / une Mancelle
サン・テティエンヌの住民名は、Etienneという人名がラテン語でStephanus「ステェファヌス」だったことに由来する。またカオールの住民名は、昔その地方に住んでいたcadurci「カドゥルキ族」の名に由来するという。ル・マンは自動車の24時間耐久レースが行われることで知られている町である。ちなみに un Manceau / une Mancelleはル・マンのあるメーヌ地方の住民も指す。その地方は古フランス語ではMancelと呼ばれていて、そこから来た住民名のようだ。