プロフィール

履 歴

 京都大学工学部原子核工学科に入学するも、理系の学問に疑問を感じて、文学部フランス語フランス文学科に転学部する。理系から文系への転身 (俗に文転という) に驚く人もいるが、それほど珍しいことではない。理系と文系の両方の分野に身を置いたことは、その後の私の研究に計り知れないほど役立った。その後、大学院に進み、途中、フランス政府給費生としてパリ第4大学 (Paris-Sorbonne) に留学。一般言語学の博士号を取得する。博士論文の題目は「フランス語と日本語における主題化の研究」。指導教授は Gustave Guillame の弟子にあたるBernard Pottier 氏。従って私は Guillame の孫弟子にあたるわけだが、まったく不肖の弟子である。帰国後、京都大学教養部 (当時) にフランス語担当助教授として赴任する。1991年4月に京都大学大学院 人間・環境学研究科が設立され、授業科目 「言語構造論」を担当する。1993年10 月に、 教養部が総合人間学部に改組され配置換えになる。国際文化学科・言語文化論講座の所属となり現在に至る。2003年4月からの大学院重点化にともない、所属は人間・環境学研究科に変更となり、担当授業科目も「言語機能論」となった。魚の鰤のごとく変化したわけである。


専門にしていること 


◇フランス語教育


 現在も総合人間学部で、全学共通科目のフランス語を担当しており、フランス語を教えることにかけてはプロ意識を持っている。しかし、いかんせん昨今の大学改革のなかで、自分がフランス語教師である割合は、低下の一途をたどり、今では30%くらいだろうか。

 フランス語教育関係では次の辞書・教科書を作った。

『新初等フランス語教本<文法篇>』(四訂版、白水社、共著), 1993
『ロワイヤル仏和中辞典 』(旺文社、共著), 1995
『プチ・ロワイヤル仏和辞典 』(改訂新版、旺文社、共著), 2003
『プチ・ロワイヤル和仏辞典 』(旺文社、共著)、1993
『目で見るフランス語発音入門 』(駿河台出版社、大木充と共著)、1989
『科学フランス語への招待』 (朝日出版社)、1991

◇フランス語学・言語学


フランス語の統語論と意味論を機能主義的立場から探求している。
主な研究テーマは
◆ 語順 word order
 非標準的語順の果たす談話機能、類型論的語順研究、知覚のストラテジーから見た語順
◆ 他動性
  transitivity受動態、非人称態、中動態、非対格動詞の研究
◆ コミュニケーションの見地から見た文の情報構造
 機能主義言語学の十八番であるテーマとレーマ、主題と焦点などの機能的構文論
◆ 指示と照応 指示詞、人称代名詞、確定記述、固有名詞の機能など
◆ 話し言葉のフランス語の談話分析と会話のストラテジーフランス語の会話コーバスの分析

ここ数年間は、話し手と聞き手の間での談話構築をモデル化する「談話モデル理論」を展開し、その理論的枠組みの中で指示と照応・視点・時制などの問題などを整合的に扱うことをめざしている。私は「フランス語学というものは存在しない」という立場を採っている。その意味するところは、「私がしているのは言語研究であり、フランス語はたまたま対象となる言語のひとつに過ぎない」というものである。だから最近は、日本語や英語についても研究論文を書いている。めざすところはひとつなのである。

◇なぜ言語を研究するのか


 このような問いを正面からすることはあまりないかもしれない。しかし、私は常にこの問題を考えている。さまざまな学問の問いかけを因数分解して共通部分を通分して行くと、ふたつの究極の問いかけに集約される。それは「世界はどのようにできているのか」「自分とは何か」のふたつである。このうち後者の「自分とは何か」は、哲学・文学・心理学・宗教が扱うものなので、私は当面はタッチしない。言語研究は前者の「世界はどのようにできているか」と関係する。言語研究は、実世界においては、計算機による自然言語処理(その成果はワープのかな漢字変換などで広く利用されている)や外国語学習などに役立つかもしれない。しかし、学問の目標はそのような実用的利益ではなく、「新しい世界像」を提示することである。ガリレオはそれまでの天動説にかわって地動説を提示した。地球が回っていることを知ったからといって日常生活に役立つわけではない。ニュートリノに質量があることが判明した場合も同じである。しかし、これらの発見は確実にそれまでとは異なる世界像を持つことを可能にしてくれる。言語研究にも同じことが言える。人間はどのようにしてコトバを獲得したのか。コトバははどのような仕組みで機能しているのか。このような問題を解明することは、人間とは何かという問いに新たな解答を与えるものである。

◇裏テーマ
 裏テーマとして、言語思想史、特に人工言語・普遍言語の歴史に興味を持ち続けている。今までは裏テーマだったが、月刊文芸誌『すばる』(集英社)に連載を始めて、表舞台に出ることになった。

趣味と特技


◆ 建築探偵


 明治・大正・昭和初期に建てられた西洋建築を見て回る。藤森照信氏の建築探偵に刺激され、暇があれば町をうろついている。五条楽園に入り込んだときは、曖昧宿の奥からやり手婆さんに手招きされうろたえた。

◆ 坂の探訪


 東京を歩くようになって覚えた楽しみ。東京には坂が多く、それぞれ味わいと由来がある。坂を歩くとその町がよくわかる。

◆ 海外ミステリーと地図


 海外ミステリーを舞台になった町の地図を見ながら読む。これは最近覚えた楽しみでとてもおもしろい。このためにニューヨーク、ボストン、ロンドン、ロサンジェルスの詳細地図を買った。好きな作家はローレンス・ブロック。行ったこともないニューヨークの地理にやたら詳しくなってしまった。

◆ 現代短歌


  自分では作らないが現代短歌を読むことが好きである。特に好きな歌人は葛原妙子、水原紫苑、平井弘。それぞれの代表歌をあげておく。

葛原妙子
 他界より眺めてあらばしづかなる 的となるべしゆふぐれの水
 水の音つねにきこゆる小卓に 恍惚として乾酪(チーズ)黴たり

水原紫苑
 殺してもしづかに堪ふる石たちの 中へ中へと赤蜻蛉 ゆけ
 菜の花の黄の溢れたりゆふぐれの 素焼きの壺に処女のからだに

平井 弘
 いちまいの平和な魚をつつくとき そんなにも近くにきていてだれか
 男の子なるやさしさは紛れなく かしてごらんぼくが殺してあげる 

最近読んだ歌集の中では、黒瀬珂瀾『黒耀宮』がなかなかだった。大阪大学の大学院生らしく、「今時こんな」と思うほどの超文学青年で、読んでいるとこちらの顔が赤くなる。一首引用しておこう

 月の生まれし森ゆ流るる幻の 汨羅に浮ける友のエレキを    

◆ 料理


これは趣味ではなく特技である。和洋中なんでも作る。得意料理は、ローストビーフ、羊と茄子の煮込み、ブリニー(ロシア風パンケーキ)。

◆ 沖縄狂い


ここ数年沖縄にはまっている。自然と風土、文化、料理、酒、人、すべてすばらしい。TVで沖縄番組があるとつい見てしまう。もちろんNHK「ちゅらさん」も見ました。好きが高じて、毎日飲む酒も泡盛ばかりになってしまった。なかでも瑞泉酒造が戦前のコウジ黴を復活させた「御酒」(うさき)がお奨めです。